【法律】空家等に関する施策を総合的かつ計画的に実施するための基本的な指針>>国土交通省

平成 27 年2月 26 日付け総務省・国土交通省告示第1号

一 空家等に関する施策の実施に関する基本的な事項
1 本基本指針の背景
近年、地域における人口減少や既存の住宅・建築物の老朽化、社会的ニーズの変化及び産業構造の変化等に伴い、居住その他の使用がなされていないことが常態である住宅その他の建築物又はこれに附属する工作物及
びその敷地(立木その他の土地に定着する物を含む。)が年々増加している。このような空家等(空家等対策の推進に関する特別措置法(平成26年法律第127号)第2条第1項に規定する「空家等」をいう。以下同じ。)の中には適切な管理が行われていない結果として安全性の低下、公衆衛生の悪化、景観の阻害等多岐にわたる問題を生じさせ、ひいては地域住民の生活環境に深刻な影響を及ぼしているものがある。今後、空家等の数が増加すれば、それがもたらす問題が一層深刻化することが懸念されるところである。
このような状況から、市町村(特別区を含む。以下同じ。)等の地方公共団体は、適切な管理が行われていない空家等に対して既存法や条例に基づき必要な助言・指導、勧告、命令等を行い適切な管理を促すとともに、それぞれの地域活性化等の観点から、国の財政上の支援措置等を利用しながら空家等を地域資源として有効活用するなど地域の実情に応じた空家等に関する施策を実施している。
しかしながら、空家等がもたらす問題が多岐にわたる一方で、空家等の所有者又は管理者(以下「所有者等」という。)の特定が困難な場合があること等解決すべき課題が多いことを踏まえると、空家等がもたらす問題に総合的に対応するための施策の更なる充実を図ることが求められるところである。
以上を踏まえ、適切な管理が行われていない空家等が防災、衛生、景観等の地域住民の生活環境に深刻な影響を及ぼしていることに鑑み、地域住民の生命、身体又は財産を保護するとともに、その生活環境の保全を図り、あわせて空家等の活用を促進するため、空家等に関する施策に関し、国による基本指針の策定、市町村による空家等対策計画の作成その他の空家等に関する施策を推進するために必要な事項を定めることにより、空家等に関する施策を総合的かつ計画的に推進し、もって公共の福祉の増進と地域の振興に寄与することを目的として、平成26年11月27日に、「空家等対策の推進に関する特別措置法(以下「法」という。)」が公布された。
(1)空家等の現状
平成25年に総務省が実施した住宅・土地統計調査の速報値(平成26年7月29日公表)によると、全国の総住宅数は 6,063 万戸となっている一方、総世帯数は 5,246 万世帯となっており、住宅ストックが量的には充足していることが分かる。このうち空き家※1の数は 820 万戸であり、これが全国の総住宅数に占める割合は 13.5%となっている。また「賃貸用又は売却用の住宅※2」及び「二次的住宅※3」を除いた「その他の住宅※4」に属する空き家の数は 318 万戸に上っている。これが全国の総住宅数に占める割合は 5.2%であるが、その数は過去 20 年間で約2倍に増加しているところである。

※1 住宅・土地統計調査における「空き家」とは、以下に掲げる「賃貸用又は売却用の住宅」、「二次的住宅」及び「その他の住宅」を合計したものをいう。
※2 住宅・土地統計調査における「賃貸用又は売却用の住宅」とは「新築・中古を問わず、賃貸又は売却のために空き家になっている住宅」をいう。
※3 住宅・土地統計調査における「二次的住宅」とは「別荘(週末や休暇時に避暑・避寒・保養などの目的で使用される住宅で、普段は人が住んでいない住宅)」及び「その他住宅(普段住んでいる住宅とは別に、残業で遅くなったときに寝泊りするなど、たまに寝泊りしている人がいる住宅)」を合計したものをいう。
※4 住宅・土地統計調査における「その他の住宅」とは「賃貸用又は売却用の住宅」
又は「二次的住宅」以外の人が住んでいない住宅で、例えば転勤・入院などのために居住世帯が長期にわたって不在の住宅や建て替えなどのために取り壊すことになっている住宅など」をいう。

(2)空家等対策の基本的な考え方
①基本的な考え方
適切な管理が行われていない空家等がもたらす問題を解消するためには、法において行政主体の責務に関する規定の前に「空家等の所有者等は、周辺の生活環境に悪影響を及ぼさないよう、空家等の適切な管理に努めるものとする。」(法第3条)と規定されているように、第一義的には空家等の所有者等が自らの責任により的確に対応することが前提となる。
しかしながら、空家等の所有者等が、経済的な事情等から自らの空家等の管理を十分に行うことができず、その管理責任を全うしない場合等も考えられる。そのような場合においては、所有者等の第一義的な責任を前提にしながらも、住民に最も身近な行政主体であり、個別の空家等の状況を把握することが可能な立場にある各市町村が、地域の実情に応じて、地域活性化等の観点から空家等の有効活用を図る一方、周辺の生活環境に悪影響を及ぼす空家等については所要の措置を講ずるなど、空家等に関する対策を実施することが重要となる。なお、この点を明確化する観点から、法第4条においては市町村の責務として「市町村は、第6条第1項に規定する空家等対策計画の作成及びこれに基づく空家等に関する対策の実施その他の空家等に関する必要な措置を適切に講ずるよう努めるものとする。」と規定されている。
また、国及び都道府県においては、以下に掲げるような役割を踏まえ、市町村と連携してその空家等に関する対策の実施を支援することが重要である。
②市町村の役割
市町村は、関係内部部局間の連携、必要に応じた協議会(法第7条第1項に規定する協議会をいう。以下同じ。)の組織、相談体制の整備等による法の実施体制の整備に着手し、まず法第9条第1項の調査を通じて、各市町村内における空家等の所在及び状態の実態把握並びにその所有者等の特定を行うことが重要である。また、必要に応じ、法第6条第1項に基づく空家等対策計画の作成を行い、各地域内の空家等に対する行政としての基本姿勢を住民に対して示しつつ、空家等及びその跡地の活用方策についても併せて検討する。さらに、適切な管理が行われておらず、結果として地域住民の生活環境に悪影響を及ぼしている空家等については、法第9条第2項に基づく立入調査を必要に応じて行いつつ、法第14条に基づく「特定空家等」(法第2条第2項に規定する特定空家等をいう。以下同じ。)に対する必要な措置を講ずることが重要である。
なお、市町村は法第6条第4項に基づき、都道府県知事に対し、空家等対策計画の作成及び変更並びに実施に関し、情報の提供、技術的な助言その他の必要な援助を求めることができることとされている。
また、空家等対策を行う上では、必要に応じて、事務の委託、事務の代替執行等の地方公共団体間の事務の共同処理の仕組みを活用することも考えられる。
③都道府県の役割
都道府県知事は、②で述べたように、法第6条第4項に基づき市町村から空家等対策計画の作成及び変更並びに実施に関して必要な援助を求められた場合のほか、法第8条において「空家等に関しこの法律に基づき市町村が講ずる措置について、当該市町村に対する情報の提供及び技術的な助言、市町村相互間の連絡調整その他必要な援助を行うよう努めなければならない。」こととされている。
具体的には、例えば県内の市町村間での空家等対策の情報共有への支援、建築部局の存在しない市町村が、特定空家等に該当するか否かの判断に困難を来たしている場合における技術的な助言の提供や空家等対策を推進している都道府県内市町村相互間の意見交換の場を設ける、協議会の構成員を仲介又はあっせんするといった対応が考えられる。また、市町村に対して必要な援助を行うに際し、都道府県内の関係部局の連携体制を構築することが望ましい。
このほか、特に建築部局の存在しない市町村に対しては、例えば都道府県の建築部局による専門技術的サポートを受けられるような体制作りを支援したり、協議会への参画を通じた協力をすることも考えられる。加えて、市町村が住民等からの空家等に関する相談に対応するための体制を整備するのに際し、宅地建物取引業者等の関係事業者団体や建築士等の関係資格者団体との連携を支援することも考えられる。
さらに、都道府県は国とともに、市町村が行う空家等対策計画に基づく空家等に関する対策の適切かつ円滑な実施に資するため、空家等に関する対策の実施に要する費用に対する補助など必要な財政上の措置等を講ずるものとされている(法第15条)。
④国の役割
国は、法の内容について、地方公共団体等に対して具体的に周知を図るとともに、法第14条に基づく市町村長による特定空家等に対する措置に関し、その適切な実施を図るために必要な指針(以下「ガイドライン」という。)を定めること等により、市町村による空家等対策の適切な実施を支援することとする。
また、③で述べたとおり、国は市町村が行う空家等対策計画に基づく空家等に関する対策の適切かつ円滑な実施に資するため、空家等に関する対策の実施に要する費用に対する補助、地方交付税制度の拡充など必要な財政上の措置や必要な税制上の措置その他の措置を講ずるものとされているところ、例えば市町村が空家等対策計画の作成のため空家等の実態調査を行う場合や、空家等の所有者等に対してその除却や活用に要する費用を補助する場合、当該市町村を交付金制度により支援するほか、市町村が取り組む空家等に関するデータベースの整備、空家等相談窓口の設置、空家等対策計画に基づく空家等の活用・除却等に要する経費について特別交付税措置を講ずる等、空家等対策を実施する市町村を支援することとする。

2 実施体制の整備
空家等対策を市町村が効果的かつ効率的に実施するためには、空家等の調査・確認、特定空家等に対する立入調査又は措置などに不断に取り組むための体制を整備することが重要であることから、市町村は、空家等対策に関係する内部部局の連携体制や空家等の所有者等からの相談を受ける体制の整備を図るとともに、必要に応じて協議会の組織を推進する。
(1)市町村内の関係部局による連携体制
空家等がもたらす問題を解消するには、防災、衛生、景観等多岐にわたる政策課題に横断的に応える必要があることから、市町村においては、それら政策課題に対応する建築・住宅・景観・まちづくり部局、税務部局、法務部局、消防部局、防災・危機管理部局、環境部局、水道部局、商工部局、市民部局、財政部局等の関係内部部局が連携して空家等対策に対応できる体制の構築を推進することが望ましい。
特に建築部局の参画は、空家等が倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態又は著しく衛生上有害となるおそれのある状態であるかどうかの判断やその対応策を検討する観点から重要である。また、1(2)③に述べたとおり、建築部局の存在しない市町村においては、建築部局を擁する都道府県の援助を得ることにより、空家等対策の実施に当たり必要となる連携体制を構築することが重要である。
さらに、税務部局の参画は特に空家等の土地について、住宅用地に係る固定資産税及び都市計画税の課税標準の特例措置(以下「固定資産税等の住宅用地特例」という。)の適切な運用を図る観点から、法務部局の参画は所有者等が不明である空家等に対してどのような対処方針で臨むかを検討する観点から、それぞれ重要である。
(2)協議会の組織
市町村は、法第7条に基づき、空家等対策計画の作成及び変更並びに実施に関する協議を行うための「協議会」を組織することができ、その構成員としては「市町村長(特別区の区長を含む。)のほか、地域住民、市町村の議会の議員、法務、不動産、建築、福祉、文化等に関する学識経験者その他の市町村長が必要と認める者をもって構成する。」ものとされている(同条第2項)。
協議会の構成員として、具体的には弁護士、司法書士、宅地建物取引業者、不動産鑑定士、土地家屋調査士、建築士、社会福祉士の資格を有して地域の福祉に携わる者、郷土史研究家、大学教授・教員等、自治会役員、民生委員、警察職員、消防職員、道路管理者等公物管理者、まちづくりや地域おこしを行うNPO等の団体が考えられる。これに加え、都道府県や他市町村の建築部局に対して協力を依頼することも考えられる。
なお、この協議会は、法に規定されているとおり空家等対策計画の作成及び変更に関する協議を行うほか、同計画の実施の一環として、例えば、①空家等が特定空家等に該当するか否かの判断、②空家等の調査及び特定空家等と認められるものに対する立入調査の方針、③特定空家等に対する措置の方針などに関する協議を行うための場として活用することも考えられる。また、協議会における協議の過程で空家等の所有者等の氏名、住所などの情報が外部に漏えいすることのないよう、協議会の構成員は当該情報の取扱いには細心の注意を払う必要がある。
また、協議会を設置するに当たっては、1市町村に1つの協議会を設置するほか、例えば1つの市町村が複数の協議会を設置したり、複数の市町村が共同して1つの協議会を設置したりすることも可能である。
(3)空家等の所有者等及び周辺住民からの相談体制の整備
法第12条には「市町村は、所有者等による空家等の適切な管理を促進するため、これらの者に対し、情報の提供、助言その他必要な援助を行うよう努めるものとする。」と規定されている。本規定を踏まえ、例えば自ら所有する空家等をどのように活用し、又は除却等すればよいかについてのノウハウの提供や、引っ越し等により今後長期にわたって自宅を不在にせざるを得ない場合における今後の対応方針の相談を当該住宅等の所有者等が市町村に求めることが必要である場合が想定されるため、市町村はその要請に迅速に対応することが可能な体制を整備することが望ましい。なお、体制整備に当たっては、空家等をめぐる一般的な相談はまず市町村において対応した上で、専門的な相談については
宅地建物取引業者等の関係事業者や関係資格者等専門家の団体と連携して対応するものとすることも考えられる。
また、空家等の所有者等に限らず、例えば空家等の所在地の周辺住民からの当該空家等に対する様々な苦情や、移住、二地域居住又は住み替えを希望する者からの空家等の利活用の申入れに対しても、市町村は迅速に回答することができる体制を整備することが望ましい。

3 空家等の実態把握
(1)市町村内の空家等の所在等の把握
市町村が空家等対策を効果的かつ効率的に実施するためには、既存の統計資料等も活用しつつ、まず各市町村の区域内の空家等の所在やその状態等を把握することが重要である。
「空家等」は、法第2条第1項により「建築物又はこれに附属する工作物であって居住その他の使用がなされていないことが常態であるもの及びその敷地(立木その他の土地に定着するものを含む。)をいう。」と定義されている。ここでいう「建築物」とは建築基準法(昭和25年法律第201号)第2条第1号の「建築物」と同義であり、土地に定着する工作物のうち、屋根及び柱又は壁を有するもの(これに類する構造のものを含む。)、これに附属する門又は塀等をいい、また「これに附属する工作物」とはネオン看板など門又は塀以外の建築物に附属する工作物が該当する。
市町村はその区域内の建築物又はこれに附属する工作物(以下「建築物等」という。)のうち「居住その他の使用がなされていないことが常態であるもの」を空家等と判断し、この法律を適用することとなる。「居住その他の使用がなされていないこと」とは、人の日常生活が営まれていない、営業が行われていないなど当該建築物等を現に意図をもって使い用いていないことをいうが、このような建築物等の使用実態の有無については、法第9条第1項の調査を行う一環として、調査時点での建築物等の状況を基に、建築物等の用途、建築物等への人の出入りの有無、電気・ガス・水道の使用状況及びそれらが使用可能な状態にあるか否か、建築物等及びその敷地の登記記録並びに建築物等の所有者等の住民票の内容、建築物等の適切な管理が行われているか否か、建築物等の所有者等によるその利用実績についての主張等から客観的に判断することが望ましい。
また、「居住その他の使用がなされていない」ことが「常態である」とは、建築物等が長期間にわたって使用されていない状態をいい、例えば概ね年間を通して建築物等の使用実績がないことは1つの基準となると考えられる。
調査の結果「空家等」に該当する建築物等については、法第11条に基づき、例えば空家等の所在地を一覧表にし、又は地図上に示したものを市町村の内部部局間で常時確認できるような状態にしておくなど、空家等の所在地について市町村内の関係部局が情報共有できる環境を整備することが重要である。
なお、「国又は地方公共団体が所有し、又は管理する」建築物等については、通常は各法令に基づき適切に管理されることが想定され、またその活用等についても、多くの場合は当該建築物等を管理する国又は地方公共団体の責任において行われる実態に鑑み、空家等から明示的に除外されている。
また、空家等のうち、「そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態又は著しく衛生上有害となるおそれのある状態、適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態にあると認められる」もの(法第2条第2項)については「特定空家等」に該当することとなるが、どのような空家等が「特定空家等」に該当するか否かを判断する際に参考となる基準等については、国土交通大臣及び総務大臣がガイドラインにおいて別途定めることとしている。
(2)空家等の所有者等の特定及び意向の把握
空家等の所在等を把握した市町村においては、次に当該空家等の所有者等を特定するとともに、必要に応じて当該所有者等がその所有する空家等をどのように活用し、又は除却等しようとする意向なのかについて、併せて把握することが重要である。これらの情報を把握するためには、(3)に述べる手段を用いて所有者等を確知し、当該所有者等に対して法第9条第1項に基づき聞き取り調査等を行うことが重要である。なお、所有者等による空家等の適切な管理を促進するため、市町村は、法第12条に基づき空家等の所有者等に対し、例えば時々の通水、換気、清掃等の適切な管理又は適宜の除草、立木竹の伐採、枝打ち等により空家等の劣化を防ぐことができる旨の助言を行ったり、空家等を日頃管理することが難しい所有者等については当該空家等を適切に管理する役務を提供する専門業者に関する情報を提供したりすることが考えられる。
(3)空家等の所有者等に関する情報を把握する手段
市町村長が(2)の調査を通じて空家等の所有者等の特定を行うためには、空家等の所在する地域の近隣住民等への聞き取り調査に加え、法務局が保有する当該空家等の不動産登記簿情報及び市町村が保有する空家等の所有者等の住民票情報や戸籍謄本等を利用することが考えられる。これらの情報は、いずれも不動産登記法(平成16年法律第123号)、住民基本台帳法(昭和42年法律第81号)、戸籍法(昭和22年法律第224号)等既存の法制度により入手可能なものであるが、市町村長は法第10条第3項に基づき「この法律の施行のために必要があるときは、関係する地方公共団体の長その他の者に対して、空家等の所有者等の把握に関し必要な情報の提供を求めることができる。」こととされていることから、例えば空家等の不動産登記簿情報については関係する法務局長に対して、電子媒体による必要な不動産登記簿情報の提供を求めることができる。このように市町村長が法務局長に電子媒体による不動産登記簿情報を求めることとすれば、4で述べる空家等に関するデータベースを市町村が整備しようとする際に有効と考えられる。また、同項に基づき、電気、ガス等の供給事業者に、空家等の電気、ガス等の使用状況やそれらが使用可能な状態にあるか否かの情報の提供を求めることも可能である。
また、従来、固定資産税の納税者等に関する固定資産課税台帳については、地方税法(昭和25年法律第226号)第22条により、同台帳に記載された情報を空家等対策に活用することは秘密漏えい罪に該当するおそれがあることから、たとえ同じ市町村の他部局に対してであっても、税務部局が同台帳に記載された情報の提供を行うことは原則としてできないものとされてきた。しかしながら、固定資産課税台帳に記載された情報のうち空家等の所有者等に関するものは、空家等の所有者等を特定する上では不動産登記簿情報等と並んで有力な手段であることから、法第10条第1項により、この法律の施行のために必要な限度において、固定資産課税台帳に記載された空家等の所有者等に関する情報を空家等対策のために市町村の内部で利用することができることとなるとともに、同条第2項により、都が保有する固定資産課税台帳に記載された空家等の所有者等に関する情報について、特別区の区長から提供を求められたときは、都知事は速やかに当該情報の提供を行うものとすることとされた。
なお、固定資産税の課税その他の事務のために利用する目的で保有する情報については、固定資産課税台帳に記載された情報に限らず、例えば各市町村の個人情報保護条例などにより目的外利用が制限されている情報のうち、空家等の所有者等の氏名、住所等の情報で、法に基づき各市町村が空家等対策のために必要となる情報については、法の施行のために必要な限度において、市町村長は法第10条第1項に基づき内部で利用することが可能である。

4 空家等に関するデータベースの整備等
市町村長が調査の結果「空家等」として把握した建築物等については、法第11条に基づき「データベースの整備その他空家等に関する正確な情報を把握するために必要な措置を講ずるよう努めるものとする。」とされている。3(1)で述べたとおり、市町村においては、同条に基づき、例えば空家等の所在地を一覧表にし、又は地図上に示したものを市町村の内部部局間で常時確認できるような状態にしておくなど、空家等の所在地について市町村内の関係部局が情報共有できる環境を整備するよう努めるものとする。なお、「データベース」の整備に際しては、必ずしも電子媒体による必要はなく、各市町村の判断により、紙媒体によることも可能である。
この「データベース」には空家等の所在地、現況、所有者等の氏名などについて記載することが考えられるが、これらに加えて、空家等のうち「特定空家等」に該当するものについては、「データベース」内に「特定空家等」に該当する旨並びに市町村長による当該「特定空家等」に対する措置の内容及びその履歴についても併せて記載する等により、継続的に把握していく必要がある。
なお、上記情報については、空家等の所有者等の了解なく市町村内から漏えいすることのないよう、その取扱いには細心の注意を払う必要がある。
また、市町村によっては、その区域内の空家等の数が多い、又は市町村内の体制が十分ではない等の事情から、把握した空家等に関する全ての情報について「データベース」化することが困難な場合も考えられる。そのような場合であっても、「特定空家等」に係る土地については、8(2)で述べるとおり固定資産税等の住宅用地特例の対象から除外される場合があり、その点で税務部局と常に情報を共有する必要があることから、少な
くとも「特定空家等」に該当する建築物等については「データベース」化することが必要である。
また、法第11条に基づき「データベース」化の対象とされた空家等のうち、「建築物を販売し、又は賃貸する事業を行う者が販売し、又は賃貸するために所有し、又は管理する」空家等については、その対象から除外されている。これは、いわゆる「空き物件」に該当する空家等については、宅地建物取引業者等により適切に管理されていると考えられる上、「空き物件」たる空家等の活用もこれら業者等により市場取引を通じて図られることから、市町村による空家等対策の対象とする必要性が小さく、したがって「データベース」の対象とする実益に乏しいと考えられるためである。
しかしながら、たとえ「空き物件」に該当する空家等であったとしても、周辺の生活環境に悪影響を及ぼしているものについては、この法律の趣旨及び目的に照らし、市町村がその実態を把握しておくことが適切であると考えられることから、本条に基づく「データベース」の対象となる。

5 空家等対策計画の作成
空家等対策を効果的かつ効率的に推進するためには、各市町村において、空家等対策を総合的かつ計画的に実施するための計画を作成することが望ましい。
法第6条第1項に基づき、市町村が空家等対策計画を定める場合、同計画には①空家等に関する対策の対象とする地区及び対象とする空家等の種類その他の空家等に関する対策に関する基本的な方針、②計画期間、③空家等の調査に関する事項、④所有者等による空家等の適切な管理の促進に関する事項、⑤空家等及び除却した空家等に係る跡地の活用の促進に関する事項、⑥特定空家等に対する措置その他の特定空家等への対処に関する事項、⑦住民等からの空家等に関する相談への対応に関する事項、⑧空家等に関する対策の実施体制に関する事項及び⑨その他空家等に関する対策の実施に関し必要な事項を定めるものとする(同条第2項)。
空家等対策計画に定めるべき各項目の具体的な内容及び特に重要となる記載事項については二2で示すとおりであるが、同計画を定めるに当たっては、各市町村における空家等対策の全体像を住民が容易に把握することができるようにするとともに、空家等の適切な管理の重要性及び管理不全の空家等がもたらす諸問題について広く住民の意識を涵養するように定めることが重要である。この観点から、空家等対策計画については定期的にその内容の見直しを行い、適宜必要な変更を行うよう努めるものとする。

6 空家等及びその跡地の活用の促進
空家等対策を推進する上では、各市町村がその跡地も含めた空家等を地域資源として利活用すべく、今後の空家等の活用方策を検討することも重要である。このような観点から、法第13条は「市町村は、空家等及び空家等の跡地に関する情報の提供その他これらの活用のために必要な対策を講ずるよう努めるものとする。」と規定されている。
空家等の中には、地域交流、地域活性化、福祉サービスの拡充等の観点から、所有者等以外の第三者が利活用することにより、地域貢献などに有効活用できる可能性のあるものも存在する。
具体的な空家等を有効に利活用する方策としては、例えば、利活用可能な空家等又はその跡地の情報を市町村が収集した後、当該情報について、その所有者の同意を得た上で、インターネットや宅地建物取引業者の流通ネットワークを通じて、広く当該空家等又はその跡地を購入又は賃借しようとする者に提供することが想定される。その際、空き家バンク等の空家等情報を提供するサービスにおける宅地建物取引業者等の関係事業者団体との連携に関する協定を締結することが考えられる。
また、空家等を市町村等が修繕した後、地域の集会所、井戸端交流サロン、農村宿泊体験施設、住民と訪問客との交流スペース、移住希望者の住居等として当該空家等を活用したり、空家等の跡地を漁業集落等の狭隘な地区における駐車場として活用したりすることも考えられる。この際、空家等の用途変更に当たっては、建築基準法、都市計画法、景観法、消防法、旅館業法等の関係法令を遵守するものとする。
なお、空家等の利活用方策については、空家等対策計画の実施に関する課題であることから、その検討を行う場として協議会を積極的に活用することが考えられる。

7 特定空家等に対する措置の促進
法第2条第2項に規定する「特定空家等」に該当する建築物等は、適切な管理が行われていない結果として、地域住民の生活環境に深刻な影響を及ぼしているものであり、市町村長は、地域住民の生命、身体又は財産を保護するとともに、その生活環境の保全を図るために必要な措置を早急に講ずることが望ましい。
「特定空家等」に該当する建築物等については、市町村長は、建築物等の詳細な現状を把握し、周辺の生活環境の保全を図るためにどのような措置が必要となるかについて迅速に検討するため、法第9条第2項に基づき、市町村職員又はその委任した者(例えば建築士や土地家屋調査士など)に「特定空家等」に該当すると認められる「空家等」に対して立入調査をさせることができる。また、この調査結果に基づき、市町村長は「特定空家等」の所有者等に対し、必要な措置を助言・指導、勧告及び命令することができる(法第14条第1項から第3項まで)とともに、その措置を命ぜられた者がその措置を履行しないとき、履行しても十分でないとき又は履行しても期限内に完了する見込みがないときは、行政代執行法(昭和23年法律第43号)の定めるところに従い、本来「特定空家等」の所有者等が履行すべき措置を代執行することができる(同条第9項)。この他、法第14条は「特定空家等」の所有者等に対して市町村長が必要な措置を命ずる際に講ずるべき手続(同条第4項から第8項まで並びに同条第10項及び第11項)、所有者等を市町村長が確知することができない場合における代執行に関する規定(同条第10項)等を定めている。
法第9条第2項に基づく立入調査及び法第14条に基づく措置は、いずれも「特定空家等」の所有者等にとっては強い公権力の行使を伴う行為を含むものである。このため、国土交通大臣及び総務大臣は、どのような空家等が「特定空家等」に該当するか否かを判断する際に参考となる判断基準や市町村長が「特定空家等」の所有者等に対して必要な措置を助言・指導する段階から最終的には代執行を行うに至る段階までの基本的な手続の内容等について記載したガイドラインを、法第14条第14項に基づき定めることとしている。各市町村長は、必要に応じてこのガイドラインを参照しつつ、各地域の実情に応じた「特定空家等」に関する対策に取り組むこととする。
なお、「特定空家等」に対して立入調査や必要な措置を講ずるに当たっては、市町村においては、建築・住宅・景観・まちづくり部局、税務部局、法務部局、消防部局、防災・危機管理部局、環境部局、水道部局、商工部局、市民部局等の関係内部部局間の連携が一層求められる。

8 空家等に関する対策の実施に必要な財政上・税制上の措置
(1)財政上の措置
法第15条第1項においては「国及び都道府県は、市町村が行う空家等対策計画に基づく空家等に関する対策の適切かつ円滑な実施に資するため、空家等に関する対策の実施に要する費用に対する補助、地方交付税制度の拡充その他の必要な財政上の措置を講ずるものとする。」と規定されている。
具体的には、例えば一1(2)④で述べたような財政上の措置を国として講ずることとする。また、空家等を活用するに当たり必要となる費用の一部を市町村を通じて、又は都道府県から直接、それぞれ予算支援している都道府県も存在する。
以上を踏まえつつ、地域活性化や良好な居住環境の整備を促進する観点から、空家等の利活用や除却等を始めとする空家等対策に取り組む市町村を支援するため、国及び都道府県においては、市町村による空家等対策の実施に要する費用に対して引き続き財政上の措置を講ずるよう努めるものとする。
(2)税制上の措置
法第15条第2項においては「国及び地方公共団体は、市町村が行う空家等対策計画に基づく空家等に関する対策の適切かつ円滑な実施に資するため、必要な税制上の措置その他の措置を講ずるものとする。」と規
定されている。現在、人の居住の用に供する家屋の敷地のうち一定のものについては、地方税法第349条の3の2及び同法第702条の3に基づき、当該敷地の面積に応じて、その固定資産税の課税標準額を6分の1(200㎡以下の部分の敷地)又は3分の1(200㎡を超える部分の敷地)とするとともに、その都市計画税の課税標準額を3分の1(200㎡以下の部分の敷地)又は3分の2(200㎡を超える部分の敷地)とする特例措置(固定資産税等の住宅用地特例)が講じられている。この固定資産税等の住宅用地特例が、管理状況が悪く、人が住んでいない家屋の敷地に対して適用されると、比較的地価が高い地域においては当該家屋を除却した場合※と比べて固定資産税等が軽減されてしまうため、空き家の除却や適正管理が進まなくなる可能性があるとの指摘が存在する。
※ 固定資産税等の住宅用地特例が適用されない場合の税額は、課税標準額の上限を価格の7割とするなどの負担調整措置及び各市町村による条例減額制度に基づき決定されることとなる。
空家等の中でも、「特定空家等」は地域住民の生活環境に深刻な影響を及ぼしているものであり、その除却や適正管理を促すことは喫緊の課題である。以上を踏まえ、空家等対策の適切かつ円滑な実施にまさに「必要な税制上の措置」として、平成27年度税制改正の大綱(平成27年1月14日閣議決定)において「法に基づく必要な措置の勧告の対象となった特定空家等に係る土地について、住宅用地に係る固定資産税及び都市計画税の課税標準の特例措置の対象から除外する措置を講ずる。」旨の記載がなされた。
また、あわせて、人の居住の用に供すると認められない家屋の敷地に対しては、そもそも固定資産税等の住宅用地特例は適用されないことに留意が必要である。

二 空家等対策計画に関する事項
市町村は、協議会を設置した場合には当該協議会の構成員等から意見を聴取するとともに、必要に応じて都道府県からの情報提供や技術的な助言を受けつつ、各市町村の区域内で必要となる空家等に関する対策を総合的かつ計画的に実施するため、本基本指針に即して、法第6条第2項に掲げる事項を定めた空家等対策計画の作成を推進する。
その際、一3(1)及び(2)で述べたとおり、各市町村内における空家等の実態を的確に把握した上で、空家等対策計画における目標を設定するとともに、定期的に当該目標の達成状況を評価し、適宜同計画の改定等の見直しを行うことが望ましい。
1 効果的な空家等対策計画の作成の推進
効果的な空家等対策計画を作成するためには、各市町村内における防災、衛生、景観等の空家等がもたらす問題に関係する内部部局が連携し、空家等に関する対策を分野横断的に記載した総合的な計画を作成することが重要である。また、周辺の生活環境に深刻な影響を及ぼしている空家等に対処するだけでなく、こうした空家等のそもそもの増加を抑制する観点から、三で述べるような施策等も含めた形で作成することが望ましい。
2 空家等対策計画に定める事項
(1)空家等に関する対策の対象とする地区及び対象とする空家等の種類その他の空家等に関する対策に関する基本的な方針
各市町村における空家等に関する対策について、各市町村長が把握した空家等の数、実態、分布状況、周辺への悪影響の度合いの状況や、これまでに講じてきた空家等対策等を踏まえ、空家等に関する政策課題をまず明らかにした上で、空家等対策の対象地区、対象とする空家等の種類(例えば空き住居、空き店舗など)や今後の空家等に関する対策の取組方針につ
いて記載する。
特に、空家等対策の対象地区を定めるに当たっては、各市町村における空家等の数や分布状況を踏まえ、空家等対策を重点的に推進するべき地区を重点対象地区として定めることが考えられる。また、対象とする空家等の種類は、市町村長による空家等調査の結果、どのような種類の建築物が空家等となっていたかを踏まえ、重点対象地区を定める場合同様、どの種類の空家等から対策を進めていくかの優先順位を明示することが考えられる。
これらの記載により、各市町村における空家等対策の今後の基本的な方針を、住民にとって分かりやすいものとして示すことが望ましい。
なお、空家等対策計画の作成に当たっては、必ずしも市町村の区域全体の空家等の調査を行うことが求められるわけではない。例えば、各市町村における中心市街地や郊外部の住宅団地等の中で、既に空家等の存在が周辺の生活環境に深刻な影響を及ぼしている地域について先行的に計画を作成し、その後必要に応じて順次計画の対象地区を拡大していく方法も考えられる。
(2)計画期間
空家等対策の計画期間は、各市町村における空家等の実態に応じて異なることが想定されるが、既存の計画で定めている期間や住宅・土地に関する調査の実施年と整合性を取りつつ設定することが考えられる。なお、計画期限を迎えるごとに、各市町村内における空家等の状況の変化を踏まえ、計画内容の改定等を検討することが重要である。
(3)空家等の調査に関する事項
各市町村長が法第9条第1項に基づき当該市町村の区域内にある空家等の所在及び当該空家等の所有者等を把握するための調査その他空家等に関しこの法律の施行のために必要な調査を行うに当たって必要となる事項を記載する。具体的には、例えば空家等の調査を実際に実施する主体名、対象地区、調査期間、調査対象となる空家等の種類、空家等が周辺に及ぼしている悪影響の内容及び程度その他の調査内容及び方法を記載することが考えられる。
(4)所有者等による空家等の適切な管理の促進に関する事項
一1(2)①で述べたとおり、空家等の適切な管理は第一義的には当該空家等の所有者等の責任において行われるべきことを記載するとともに、空家等の所有者等に空家等の適切な管理を促すため、例えば各市町村における相談体制の整備方針や、空家等の利活用に関心を有する外部の者と当該空家等の所有者等とのマッチングを図るなどの取組について記載することが考えられるほか、空家等の所有者等の意識の涵養や理解増進に資する事項を記載することが考えられる。
(5)空家等及び除却した空家等に係る跡地の活用の促進に関する事項
一6で述べたとおり、各市町村において把握している空家等の中には、修繕等を行えば地域交流や地域活性化の拠点として利活用できるものも存在し、また利活用する主体は当該空家等の所有者等に限られていない。
例えば各市町村が把握している空家等に関する情報を、その所有者の同意を得た上でインターネットや宅地建物取引業者の流通ネットワークを通じて広く外部に提供することについて記載することが考えられる。その際、空き家バンク等の空家等情報を提供するサービスにおける宅地建物取引業者等の関係事業者団体との連携に関する協定が締結されている場合には、その内容を記載することも考えられる。また、当該空家等を地域の集会所、井戸端交流サロン、農村宿泊体験施設、住民と訪問客との交流スペース、移住希望者の住居等として活用したり、当該空家等の跡地を漁業集落等の狭隘な地区における駐車場として活用したりする際の具体的な方針や手段について記載することが考えられる。
(6)特定空家等に対する措置その他の特定空家等への対処に関する事項
一7で述べたとおり、「特定空家等」に該当する建築物等は、地域住民の生活環境に深刻な影響を及ぼしているものであることから、各市町村長が「特定空家等」に対してどのような措置を講ずるのかについて方針を示すことが重要である。具体的には、必要に応じて国土交通大臣及び総務大臣が別途定めるガイドラインの記載事項を参照しつつ、例えば各市町村長が「特定空家等」であることを判断する際の基本的な考え方や、「特定空家等」に対して必要な措置を講ずる際の具体的な手続等について記載することが望ましい。
(7)住民等からの空家等に関する相談への対応に関する事項
一2(3)で述べたとおり、各市町村に寄せられる空家等に関する相談の内容としては、例えば空家等の所有者等自らによる空家等の今後の利活用方針に関するものから、空家等が周辺に及ぼしている悪影響に関する周辺住民による苦情まで幅広く考えられる。そのような各種相談に対して、各市町村はできる限り迅速に回答するよう努めることとし、例えば各市町村における相談体制の内容や住民に対する相談窓口の連絡先について具体的に記載することが望ましい。
(8)空家等に関する対策の実施体制に関する事項
空家等がもたらす問題は分野横断的で多岐にわたるものであり、各市町村内の様々な内部部局が密接に連携して対処する必要のある政策課題であることから、例えばどのような内部部局が関係しているのかが住民から一覧できるよう、各内部部局の役割分担、部署名及び各部署の組織体制、各部署の窓口連絡先等を記載することが考えられる。また、協議会を組織する場合や外部の関係団体等と連携する場合については、併せてその内容を記載することが望ましい。
(9)その他空家等に関する対策の実施に関し必要な事項
(1)から(8)までに掲げる事項以外に、各市町村における空家等の実情に応じて必要となる支援措置や、空家等対策の効果を検証し、その結果を踏まえて計画を見直す旨の方針等について記載することが考えられる。
3 空家等対策計画の公表等
法第6条第3項により、「市町村は、空家等対策計画を定め、又はこれを変更したときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。」ものとされている。公表手段は各市町村の裁量に委ねられているが、単に各市町村の公報に掲載するだけでなく、例えばインターネットを用いて公表するなど、住民が計画の内容について容易に知ることのできる環境を整備することが重要である。

三 その他空家等に関する施策を総合的かつ計画的に実施するために必要な事項
1 空家等の所有者等の意識の涵養と理解増進
適切な管理がその所有者等によってなされない空家等は、周辺地域に悪影響を及ぼす要因となるものと考えられることから、空家等の適切な管理を行うことの重要性、管理不全の空家等が周辺地域にもたらす諸問題及びそれに対処するために作成した空家等対策計画の内容については、空家等の所有者等に限らず、広く住民全体で共有されることが望ましい。このような観点からは、例えば、空家等対策計画の公表に合わせて、空家等の適切な管理を行うことの重要性や管理不全の空家等が周辺地域にもたらす諸問題について広報を行ったり、協議会における協議の内容を住民に公開したりする等により、空家等の適切な管理の重要性や空家等の周辺地域にもたらす諸問題への関心を広く惹起し、地域全体でその対処方策を検討・共有できるようにすることが望ましい。
2 空家等に対する他法令による諸規制等
空家等については、この法律に限らず、例えば建築基準法、消防法、道路法、災害対策基本法、災害救助法等各法律の目的に沿って適正な運用を図る一環から、適切な管理のなされていない空家等について必要な措置が講じられる場合も考えられる。関係法令の適用を総合的に検討する観点からも、各市町村においては一2(1)で述べたとおり、市町村の区域内の空家等の所在、所有者等について内部部局間で広く情報共有を図り、空家等対策について内部部局間の連携を取りやすい体制を整備することが重要である。
3 空家等の増加抑制策、利活用施策、除却等に対する支援施策等
空家等対策を講ずる上では、単に周辺地域に悪影響を与える管理不全の空家等に対して、この法律を始めとする2で述べたような関係法令に基づき必要な措置を講ずるだけでなく、空家等のそもそもの発生又は増加を抑制し、若しくは空家等の他用途の施設への転用等による利活用を図ることも重要である。
(1)空家等の発生又は増加の抑制等に資する施策
空家等をそもそも発生させない、又は空家等の増加を抑制する観点から、例えば1で述べたように、空家等の適切な管理を行うことの重要性、管理不全の空家等が周辺地域にもたらす諸問題及びそれに対処するための総合的な方針について所有者等の意識の涵養や理解増進を図る取組を進めることや、一2(3)で述べたように、空家等の所有者等、外部からの空家等への移住希望者、関係民間団体等との連携の下、空家等の売買・賃貸、適正管理、除却等などの幅広いニーズを掘り起こす取組を促すことが考えられる。
(2)空家等の利活用、除却等に対する支援施策
現在、空家等の所有者等だけでなく、各市町村の住民や外部からの移住希望者等が空家等を利活用し、又は除却等する取組を促す観点から、例えば空家等のリフォームの普及・促進、空家等の他用途の施設(地域活性化施設、地域間交流拠点施設、社会福祉施設、店舗等)への転用、空家等への住み替え、空家等そのものの除却等を促すための各種財政支援策が用意されている。各市町村においては、これらの支援策を活用しながら、空家等の有効活用策の選択肢を少しでも広げて住民等に提示することも重要である。

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